フィンランド語学習記 vol.296 − 複数語幹の作り方(1)

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このところ、フィンランド語教室で扱っているのが、いわゆる「複数語幹」と呼ばれる形。

この作り方が複雑で苦戦しています。

そこで今回のエントリーでは、この複数語幹の作り方を整理してみたいと思います。

 

複数語幹とは?

複数語幹というのは、フィンランド語の名詞・形容詞の複数格変化を作る際にもとになる形のこと。

例えば talo(家)の語幹は次のようになります。

talo(家)
[単数語幹]talo
[複数語幹]taloi

原則としては、単数語幹の末尾に[i]を付けることで複数語幹を作ります。

そしてこの複数語幹をもとに、さまざまな複数格変化を作ることができます。

単数 複数
主格 〜は/が talo talot
属格 〜の talon talojen
分格 〜を taloa taloja
内格 〜の中で/に talossa taloissa
出格 〜の中から talosta taloista
入格 〜の中へ taloon taloihin
接格 〜の表面で/に talolla taloilla
奪格 〜の表面から talolta taloilta
向格 〜の表面へ talolle taloille
様格 〜として talona taloina
変格 〜に(なる) taloksi taloiksi
欠格 〜なしで talotta taloitta
具格 〜を使って taloin
共格 〜と共に taloine-

*表は『フィンランド語文法ハンドブック』P.24 より

すなわちフィンランド語の複数の印は[i]なのですが、この[i]を置くことによって直前の母音に変化が起こることがあります。

今回のエントリーでは、そのルールを順番に見ていきたいと思います。

まずは複数の印[i]の前に来る母音の数で場合分けをします。

1)[i]の前に来る母音が1つの場合(例、talo)
2)[i]の前に来る母音が2つの場合(例、maa)

 

1)[i]の前に来る母音が1つの場合

フィンランド語には全部で8つの母音があります。これらの母音を以下の5つのパターンに分類して見ていきます。

1ー1)[i]の前に来る母音が[u][y][o][ö]のとき
1ー2)[i]の前に来る母音が[e]のとき
1ー3)[i]の前に来る母音が[i]のとき
1ー4)[i]の前に来る母音が[ä]のとき
1ー5)[i]の前に来る母音が[a]のとき

 

1ー1)[i]の前に来る母音が[u][y][o][ö]のとき

[i]の前に来る母音が[u][y][o][ö]のときには、それらの母音は変化しません。

karhu(熊)
[単数語幹]karhu
[複数語幹]karhui

 

1ー2)[i]の前に来る母音が[e]のとき

[i]の前に来る母音が[e]のときには、その[e]は消えます。

saari(島)
[単数語幹]saare
[複数語幹]saari

 

1ー3)[i]の前に来る母音が[i]のとき

[i]の前に来る母音が[i]のときには、その[i]は[e]に変わります。

baari(バー)
[単数語幹]baari
[複数語幹]baarei
【注】1ー2の saari は古くからのフィンランド語なので単数語幹は saare と[-e]で終わる形になりますが、1ー3の baari は外来語なので単数語幹は baari とそのまま[-i]で終わる形になります。

 

1ー4)[i]の前に来る母音が[ä]のとき

[i]の前に来る母音が[ä]のときには、その[ä]は消えます。

pöytä(テーブル)
[単数語幹]pöytä
[複数語幹]pöyti

ただし! 三音節以上の単語の場合は例外あり。以下の(1ー5ー2)のパターンに合流します。

 

1ー5)[i]の前に来る母音が[a]のとき

単語の音節の数によって変化が異なります。

1ー5ー1)単語が二音節
1ー5ー2)単語が三音節以上

 

1ー5ー1)単語が二音節

単語の最初の母音によって変化が異なります。

1ー5ー1ー1)単語の最初の母音が[u][o]のとき
1ー5ー1ー2)単語の最初の母音が[u][o]以外のとき

 

1ー5ー1ー1)単語の最初の母音が[u][o]のとき

単語の最初の母音が[u][o]のときには、単数語幹末尾の[a]は消えます。

kuva(絵)
[単数語幹]kuva
[複数語幹]kuvi

 

1ー5ー1ー2)単語の最初の母音が[u][o]以外のとき

単語の最初の母音が[u][o]以外のときには、単数語幹末尾の[a]は[o]に変わります。

laiva(フェリー)
[単数語幹]laiva
[複数語幹]laivoi

 

1ー5ー2)単語が三音節以上(語尾が[a]または[ä])

このパターンはかなり複雑で、[a/ä]が消えるものと[a/ä]が[o/ö]に変わるものに分かれます。

『フィンランド語文法ハンドブック』に書いてある原則は次のとおり。

-a/-ä で終わる3音節以上の語では、原則として名詞であれば -a/-ä は -o/-ö に変化し、形容詞であれば -a/-ä は消えてしまいます。

『フィンランド語文法ハンドブック』P.143

一方、教室では語尾の形を細かく分類し、[a/ä]が消えるものと[a/ä]が[o/ö]に変わるものを区別しました。

例えば[-la/-lä]で終わる単語の場合は[a/ä]が[o/ö]に変わるというようなルール。

kahvila(カフェ)
[単数語幹]kahvila
[複数語幹]kahviloi

ただこの部分は自分自身もまだ全貌をわかっていないので、詳細は別項へ持ち越したいと思います。

 

まとめ

長くなってしまったので、今回はここまで。(2)の母音が2つの場合は明日のエントリーで取り上げます。

1)[i]の前に来る母音が1つの場合
 1ー1)[i]の前に来る母音が[u][y][o][ö]のとき
 1ー2)[i]の前に来る母音が[e]のとき
 1ー3)[i]の前に来る母音が[i]のとき
 1ー4)[i]の前に来る母音が[ä]のとき
 1ー5)[i]の前に来る母音が[a]のとき
  1ー5ー1)単語が二音節
   1ー5ー1ー1)単語の最初の母音が[u][o]のとき
   1ー5ー1ー2)単語の最初の母音が[u][o]以外のとき
  1ー5ー2)単語が三音節以上
2)[i]の前に来る母音が2つの場合

 

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