『世界 ポエマ・ナイヴネ』
2015年最後の一冊としてポーランドの詩人チェスワフ・ミウォシュ(Czesław Miłosz)の『世界 ポエマ・ナイヴネ』という詩集を読みました。
原題は『Świat − poema naiwne』となっています。
たまたま書店で手に取った一冊だったので、まずはこの詩人についての予備知識はなにもない状態で読み始めました。
春の情景と学校帰りの子どもたちを描いた「道」から、世界の根源に触れる「太陽」まで、20編の美しい世界が広がっています。
愛は 見知らぬものごとを見るように
自分自身を見つめること なぜなら
自身もまた数あるものごとのうちの一つにすぎないのだから
「愛」より
巻末には、解説や訳者あとがきという形でミウォシュという詩人についての説明が付されています。
それによるとこの詩集は1943年、ミウォシュが31歳のときにナチス占領下のポーランド・ワルシャワで書かれたのだとか。
そのように聞くと当時の世相を反映したレジスタンス的な内容を想像してしまいますが、ここで展開されている世界は思いのほか明るいもの。
一読しただけでは、戦争という背景に思いが及ぶことはないかもしれません。
しかし二回目・三回目と読んでみると、詩人が「世界」へ向けた祈りのようなものを各編の隅々から感じることができます。
一年のしめくくりにふさわしい素敵な一冊でした。
それではみなさん良いお年をお迎えください。
港の人 (2015-09-07)
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